「ジョージ・フロイド」という黒人男性が警察官に殺された事件に端を発して、全米にデモが広がりとんでもない事態になってます。しかし、これみるたびにアメリカっちゅう国はとんでもないなと思う今日この頃です。
事件の概況は、「2020年5月25日当日、一人の白人の警察官を被疑者とする告訴状によると、偽ドル札の使用容疑により手錠をかけられたフロイドが、呼吸ができない、助けてくれ、と懇願していたにも関わらず、8分46秒間フロイドの頸部を膝で強く押さえつけ、フロイドを死亡させた」ということなのですが、日本人には理解に苦しむこの事件。
ウキはこちら↓
https://ja.wikipedia.org/wiki/ジョージ・フロイドの死
なのですが、もはやデモでも何でもない単なる暴動になってしまっている感じです。

そんな時ふと思い出したのが、まだ観ていなかった去年の映画、アカデミー賞受賞作品の「グリーンブック」。グリーンブックとは、1960年黒人差別が頻繁だった頃、黒人の人たちのために作られた「旅行ガイドブック」です。
1964東京五輪の時でさえ黒人に参政権がなかった時代
話は、1962年NYのクラブで用心棒をしているトニーが、黒人ピアニストのドクター・シャーリーがピアニストとして南部を回るツアーの運転手をするという話。シャーリーは博士号3つを持つインテリの秀才、対するトニーは教養もなく行動は粗暴、しかも最初は黒人に対する偏見を持っていた。旅をしていくうちにトニーがシャーリーに共感し、シャーリーもトニーに共感していくといく感じになっていく話。アカデミー賞では全5部門でノミネートされ、作品賞のほか脚本賞、助演男優賞を受賞。
この映画は前述の通り1962年の作品なのだが、その2年後の1964東京オリンピックの100m走でボブ・ヘイズという黒人が優勝したのだが、実質1964年の時ですら実際には黒人に参政権がなかったという話しはあまり知られていない。
実際に投票ができるようになったのは、1965年の国民投票法ができてから。それまでは投票券はあるものの、識字テストなどを実施して学問を施されていない黒人を実質排除していたからだ。
映画の感想
確かに良い映画ではありました。黒人差別だけではなく、イタリア系の差別についても言及されていた秀逸ではあるのですが、一個一個、ちょっと足りない残念な感じがしたのですよね。
・例えば、トニーは家の水道修理に来ていた黒人2人が飲んだコップをゴミ箱に捨ててしまうくらいの偏見を持っていたのに、シャーリーの運転手を引き受けた後は、あまり差別意識を表さずいきなりと言っていいくらい、シャーリーに普通に接している。
・警官に逮捕された時が黒人差別の状況を見せる場面なのに、単に牢に入っただけのような感じで一歩踏み込みがない。
・ピアニストとして招かれたホテルの高級料理店で、ホテル側から黒人だからと入店を断られた場面も、もう一つ突っ込んで支配人をぶん殴るぐらいの絵が欲しかったなと。
・そして、あの映画の白眉は、トニーが運転しながら俺は冴えない人間で、運転手で、使いっ走りでとか、シャーリーに愚痴をこぼした時、シャーリーが土砂降りの中車の外に出て歩き出した場面だと思う。シャーリーは土砂降りの中、トニーに黒人差別について話し出すのだが、そこでもっともっと踏み込んでシャーリーに喋らせてもらいたかったなと。まあ、10分くらいは語らせて、激しく感情をぶつけてもらう場面にしてほしかったな。
というわけで、ちょっとずつ残念ではあったのですが、観終わった後は、本当にしんみり、そして何より差別の恐ろしさを知らされる映画でした。
(画像出典:グリーンブックHP)