住宅購入予算の目安として、よく耳にするのが年収の「5倍以内」と言うワードです。
このことによって、いつの間にか買うべき家は年収の5倍以内に抑えなければならないという神話が作られれてしまいました。
年収5倍のルーツ
そもそもこの「年収5倍以内」という数字はどこからきたのかというと、そのルーツは実に古いものです。
1992年に宮澤喜一内閣が、政府の正式な経済計画として「生活大国5か年計画」を閣議決定しまし、その中で国民の生活に関する政策の1つとして、5倍程度で買えるようにする、と言ったのです。
首都圏で新規に売り出された住宅の平均価格は、1991年で建て売りが7000万円近く、マンションでも6000万円近いといわれています。これは世帯年収のざっと10倍に近い高水準。
普通のサラリーマン家庭が首都圏で家を買うことは、ますます難しくなっています。
この計画では、東京など大都市圏で、勤労者世帯の平均年収の5倍程度を目安に良質な住宅の取得を可能とすることを目指し、総合的な土地対策を着実に推進し、住宅対策の充実を図るとしています。
当時は年収の10程度でないと買えない、手の届かないのが不動産でそれを5倍程度に近づけるということを言ったものです。
ちなみに現在のマンションの年収倍率は、首都圏の会社員の平均年収500万円の約11-12倍の5000-5500万円程度です。つまり、五ヵ年計画から全く差は縮まっていない、それどころか広がっているのです。
では買えないのかというとそうではありません。
当時と今は何が違うのか?
ズバリ金利です。
これは住宅金融普及協会の資料ですが、このグラフをみると1990年(平成2年)当時の金利はなんと変動金利で8.5%もありました。そこから下がってきているものの高水準は8年近く続きます。
ご存知のように今は金利も固定で2%代と安く、住宅補助についても充実しています。
例えば、30年ローンで、3,000万円を金利2.4%で借りた場合毎月の返済額(ボーナス返済なし)は、116,892円、総返済額は、42,113,520 円 うち 利息分 12,113,520 円になります。
同じ条件で、金利6%で借りた場合、毎月の返済額は179,868円、総返済額は64,751,400 円 うち 利息分 34,751,400 円。
と総返済額で、なんと2千4百万円の差が出ます。
今の金利であれば年収の10倍までは可能
今の低金利がいつまで続くのかはわかりません。しかし、裏付けはあります。
アベノミクスの目標は物価の2%上昇だったのですが、現在はほぼ0%です。過去30年を見てもほとんど横ばいで上がっていません。
物価が上がらない=所得も上がらない=消費が生まれない=デフレ=金利も上がらないということが続いてきています。
そして現在のこのころな禍です。各業界が致命的なダメージを受けている状況で、金利をあげたらとんでもない不況になります。
よって、金利は当面は上がらない。そして、投資目的のマンション以外の不動産も需要が落ち込むことによって、価格が下がると想定します。
(画像出典:日経新聞)
(画像出典:総務省)
なので、年収の10倍までは安全範囲だと言えます。
もちろん、この年収は会社員の方ならば、会社が安定して続く、自営業の方ならば今の経営状態が安定して続くという前提ですので、この前提が将来崩れることがもしわかっているのなら、購入は控えるべきだと思います。