白鵬破れる「後の先と、先の先」(アゴラ掲載記事)

スポーツ

1月23日大相撲初場所11日目、10連勝していた横綱白鵬に土がついた(サンスポ)。

相撲に後の先(ごのせん)という立ち合いがある。相手より一瞬あとに立ちながらも、当たったあとには先手をとっているという立ち合いである。相手より遅れて立つことにより、相手よりも低く入ることができ、また変化されること(注文相撲)をさけることができるとも言われている。

69連勝した大横綱双葉山はこの立ち合いを得意とし、常に相手よりも遅れて立ちながらも、相手の動きをよく見て瞬時に有利な体制を作った。右目が失明状態だった双葉山が研究を重ねて編み出した、究極の立ち合いとも言われている。双葉山を尊敬している白鵬は、この「後の先」を目指していたが2016年7月の名古屋場所でこれをあきらめ、「やはり、難しい。ひとつ間違えると、土俵外にもっていかれる。もうやめました、これからは先の先(せんのせん)でいく」と言っていた(サンスポ)。

双葉山と白鵬(Wikipedia:編集部)

確かに、ここ最近の白鵬の取り口は、相手がしっかりと腰を割って重心を落とし仕切り線にしっかりと手をついたのを見届けて、その後自身が腰を落とし自分のタイミングで相手に当たるという取り口だ。この立ち合いだと、仕切り線に手をついた相手の力士は、どうしても後から立ってくる白鵬に合わせることになり、コンマ数秒遅れることになる。

これが白鵬の言う「先の先」であるとすると、昨日の取組は御岳海に「先の先」のその先(さき)をとられた形だった。御嶽海は白鵬に合わせることなく白鵬が仕切り線に手をついた瞬間に飛び込んでいった。それにより、白鵬がコンマ数秒遅れた立ち合いとなった。白鵬の相撲は「先の先」の立ち合いで有利な形を作るところにある。今後御岳海の相撲を真似て白鵬が手をついたと同時に飛び込むか、または、白鵬に先に仕切り線に先に手をつかせる「先の先」の相撲を取る力士が現れると白鵬は苦しい相撲となるのではないか。

それにしても、「後の先」の立ち合いで勝ち続けた双葉山は、ものすごい力士であると改めて感じた。きっと、白鵬にも後の先の相撲で勝つのだろう。

※ 注文相撲:立ち合いの瞬間に正面から相手とぶつからず、相手の突進をかわすようにからだを変化させる相撲の取り口。

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