1. 炎上する「あいちトリエンナーレ」
今月1日から開催された、「あいちトリエンナーレ2019」の炎上が止まらない。企画展の展示内容に、少女像や、昭和天皇の肖像を燃やす映像などがあったからだ。
騒ぎは県内に止まらず、菅官房長官や国会議員も次々コメントを出し、河村名古屋市長は少女像の展示中止を大村愛知県知事に求める等、大変な騒動になっている。少女像だけではなく、昭和天皇の肖像を燃やす映像があるという。これはもはや芸術などではなく、日本ヘイトとも言えるものである。
日本の象徴である天皇を侮辱し、人の顔を燃やしたり、踏んだりしてヘイトでないはずがない。そして批判の対象の一つとなっている少女像は、見た目は慰安婦像であり、平和の象徴であるとするにはあまりにも無理がある。
2. 日韓合意したはずの「慰安婦問題」が消えない理由
筆者は昨年2018年11月30日付のアゴラで、2015年の日韓慰安婦合意は後々禍根を残すのではと指摘したが、今起こっている問題もやはり日韓慰安婦合意に起因していると考える。慰安婦問題の争点はただ一つ。大東亜戦争の時に、日本軍が慰安婦となった女性を強制連行(不法に連行)したかどうかだ。
売春は大変不幸なことではありあってはならないことだが、当時は公娼制度も存在したように合法なものもあり、日本を含めほとんど世界中の軍隊で性ビジネスに従事している女性はいた。しかし、戦争後、あらゆる学者たちが慰安婦に関する膨大な資料を探したが、日本軍の強制連行の証拠はどこにも見つからなかった。
ところが、日韓合意の合意文には、
慰安婦問題は当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から日本政府は責任を痛感している。(中略)今回の発表により、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。
とある。問題は「軍の関与」という部分である。この言葉は日本が「日本軍による慰安婦の強制連行」を認めたと、韓国はもちろん海外でも受け止められた。後日国会で「軍の関与」の意味について問われた安倍総理は、「慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送について旧日本軍が関与した」と、関与とは管理の意味で、強制連行は確認されていないという趣旨の答弁をした。
しかし、「時すでに遅し」で、世界に日本が強制連行を認めたとの情報が流れてしまった。もしもあの時、世界に対し「不幸なことではあるが、慰安婦という方々は日本軍だけでなく世界の軍隊に存在した。しかし、日本が強制連行した証拠はどこにもない」とはっきりと強制連行を否定し、外務省も明確に何度も繰り返し海外に発信していたら事態は変わっていたはずだ。
日本政府はそれを玉虫色にしあえて「軍の関与」という抽象的な言い回しを使って、『韓国に忖度』し対立解消を図った。それが今なお慰安婦問題が根強く残る原因になっている。
3. 慰安婦合意とホワイト国除外
あいちトリエンナーレの少女像が物議を醸した8月2日、別のニュースもネット上の話題をさらった。韓国のホワイト国外しを閣議決定したニュースだ(参照:産経新聞)。
菅官房長官はあくまで、韓国の輸出管理を適切に実施するための運用見直しであり、旧朝鮮半島出身労働者問題(いわゆる徴用工問題)の対抗措置でもないと強調した。しかし、その中身の性質上、その対抗措置も含まれると考える。日本はこれまでことがあれば相手国の顔色を伺い、日本が引いてことが済むなら一歩引くことで事を納めてきた。
今回のホワイト国除外については、米国のポンペオ国務長官が日韓の間に入り、ホワイト国除外の延期を促すのではないかとのニュースも流れたが、結果は日本がぶれずに最後まで押し通した形になった。日本政府が慰安婦合意の反省の上にたって、今回ばかりは後にはひかないことを決意したのかはわからないが、明らかにこれまでの日本の対応とは違い、韓国との距離を置く決断をしたことだけは確かだ。
今回物議を醸している「あいちトリエンナーレ」は、愛知県と名古屋市が公金を出す公共性のある事業である。そして日本政府が所管の文化庁が助成する事業だ。よって、日本政府として今回の件も責任をもったしっかりした対応をお願いしたい。