台風19号が迫る中、国民民主党所属の森ゆうこ参議院議員が行った質問通告が波紋を呼んでいる。そんな中(10月16日)、批判を浴びている森議員、同党の原口国対委員長は国会内で記者会見して、森氏の質問通告の時間や内容が事前に省庁から外部へ流出したとして、衆参両院で合同調査チームを設けることを明らかにした(産経新聞)。
いわく、この情報漏洩は「質問権の侵害、憲法に規定された国会議員の発言の自由、憲法そのものに対する挑戦で、重大な民主主義への挑戦」ということらしい。
つまり、森議員らはこの情報が官僚(国家公務員)から漏れたことが、国家公務員の守秘義務違反にあたるという指摘だ。しかし、ネット上では「そもそも質問通告は国家公務員法100条の秘密として保護するに値するのか」との意見も出ている。この件はいずれ明らかになると思うが、今回の件で似たような、非常に印象的だったシーンを思い出した。そしてそのシーンと今回の件で、野党の質問の「真意」が重なって見えた。
そのシーンは2017年2月17日、衆議院の予算委員会での山尾志桜里議員(当時民進党)と安倍総理との質疑応答の場面である(ANNnewsCH)。
カットされていない部分から、あらかたを書き起こす。
山尾議員「2013年(質問の4年前)、総理は記者クラブで何年までに待機児童ゼロを目指すとおしゃったか覚えてますか?」
(安倍総理が振り向いて事務方に聞こうとし、その後塩崎厚生労働大臣が答弁に立とうとする)
山尾議員「事務方に聞かなくて結構です。何年までに待機児童ゼロ、事務方に聞かないとわからないんですか?ここでなんで塩崎大臣なんですか?わからないんですか?おかしい、ここで塩崎大臣に答えさせたら総理、自分は何年までに待機児童ゼロを目指すと、わからないでおっしゃってたということを自白したことになります。大臣、答弁やめたほうがいいです」
「総理は今振り向いて事務方に聞こうとした。それをたしなめられたら、塩崎大臣に話題をふった。総理、総理が何年までに待機児童ゼロを目指すとおっしゃっていたのかは総理にしか答えられない。総理お答えください!総理、お答えください!総理、お答えください!わからないんですか?何年までに待機児童ゼロを目指すと言ってたのか!」
安倍総理「そんなに興奮しないでください」
(場内失笑)
安倍総理「数年前の過去の発言でありますから、正確にお答えをしなければならないと思いますから、事務方に確認するのは問題ないと思いますよ。そういう時間を惜しめというならば、あらかじめ言っていただければいいだけ、通告をしていただければいいだけの話であってですね。これが常識なんです」
「通告をせずにすぐに答えられないからと言って、まさに、なにか1本取ったように感じるのは、充実した審議とはほど遠い審議と言わざるを得ないわけであります。そんなことをやろうと思えばいくらだってできるわけでありまして」
(場内失笑)
以上
普通に考えれば4年前の発言を正確に覚えている人はまずいない。きちんとした議論をしたいのなら質問を前もってするのは当然の話しであり、国民もそれを望んでいる。
今回の件について言えば、公開の場で行われる国会審議の質問内容は、国民としては事前に知りたいと思うのは当然であり、そしてそれが漏れたからと言って質問者が困るのは本来ならおかしい。
その真意は憶測すると、質問の中身があらかじめ公表されたら、答弁者の虚を衝くことができなくなるということなのだろう。答弁をまごつかせたり、返答に窮したりする様を国会でさらして自分を売り、答弁者や与党の印象を落とそうという考えが全く変わっていないということだ。安倍総理の言葉を借りれば、「1本を取る」ことだけが目的で、「充実した審議とはほど遠い審議」をやろうとしている。そこには国民への思いはまるっきりない。