マンション価格2つの「27年ぶり」が示すもの(アゴラ掲載記事)

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不動産経済研究所が21日、「首都圏のマンション市場動向」を発表した。これによると、首都圏で発売された新築マンションの戸数は1421戸であり、4月としては「27年ぶり」に1500戸を割り込んだ。1月22日に同じ不動産経済研究所が発表した「契約率」の数字からも、「27年ぶり」という数字が出てくる(共同通信)。

※画像はイメージです(tomasa/写真AC=編集部)

今回の「27年ぶり」は2019年4月単月の新築マンションの発売戸数であり、1月22日に発表された「27年ぶり」は2018年平均の「契約率」である。「契約率」とは、販売を始めた月の戸数のうちどれだけ契約に至ったかを示す数値で、2018年はこの数値が平均62.1%となり27年ぶりの低水準になったということである。ちなみに、今回発表された今年4月単月の契約率も64.3%と低調で、前月比と比べて7.9%もダウンした。

27年前といえばバブルが崩壊した時期であり、それ以来の低調な数字がここ数ヶ月で2度出たということになり、減速期に入ったかとの報道も見られた(日本経済新聞)。

ただ減速といっても、資料を読むと2019年3月以前の契約率の数値は、72.2%(3月),65.5%(2月),67.5%(1月),49.4%(‘18年12月),53.9%(11月),68.3%(10月),66.5%(9月),64.5%(8月),67.8%(7月),66.0%(6月),62.2%(5月),63.0%(4月)となっており、今回の4月単月の契約率64.3%はそこまで低い数値ではない。好調の目安とされる70%を切ってはいるが、そもそも70%を超える月はここ1年を見ても3月しかない。

また、販売戸数にしても今月(5月)は2500戸となっており、4月より1000戸も多い予定となっていて、急激な減速がすぐに始まるというふうには見えない。

マンションは昨年夏ころからすでに供給過剰の状態であり、2020年の東京五輪の前後から下落が始まるだろうと都市伝説のように言われてきた。五輪景気がしぼみ始める、五輪関連施設工事が終了し建設資材や人件費の高騰が終わる、また、選手村跡地に約4000戸のマンションが建設され首都圏全体のマンションが供給過剰になる等の理由からだ。

今回の不動産経済研究所の資料にあるように、ここ数年不動産価格が高止まりしていることと、年推移でみれば契約率が微減している事実からすると、徐々に下落期に入っていくとみるのが自然である。そして今話題の消費増税がこのまま予定どおり10%に増税されれば、それが後押しとなって下落が始まるのかもしれない。

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