入管法改正のは憲法改正に勝る(アゴラ掲載記事)

メディア掲載

来年4月の実施を目指し11月13日に審議入りした出入国管理法(入管法)の改正が、今衆議院での審議がストップしている。

審議入りを巡って、野党側は失踪した技能実習生に関する聞き取り調査の結果を明らかにするよう求めていたが、法務省が示した調査データがこれまでの説明と違っているとして納得せず、立憲民主党が委員長の解任決議案を提出する事態になっている(11月19日現在)。与党側は20日以降の本会議で解任決議案を否決し委員会での審議に入りを目指すのだろう。

もともと問題山積、拙速とも言える法案を安倍政権が目指す理由を、「安倍総理は移民賛成のグローバリストだった」で書いたが、今回はこの審議の進め方を考えてみたい。

過去の審議時間が多いものを並べ見ると

・安全保障関連法案、216時間(2015)
・社会保障と税の一体改革関連法、214時間(2012)
・1971年の沖縄返還協定関連法、208時間(1971)
・郵政民営化関連法、202時間(2005)

などがある。

今回12月10日までの臨時国会の会期を延長したとしても、これら過去に重要法案と言われるものと比べても、圧倒的に短くなるのは確実だ。

しかし、今回の入管法は過去のどの法案よりも重要である。なぜならば一旦外国人を受ければ容易には返すことはできないからだ。安倍総理も11月13日の国会での趣旨説明において、「人手不足が解消された場合でも、すでに在住する外国人の在留をただちに打ち切り、帰国させることは考えていない」と述べた。

外国人の個別の状況を考慮し、生活環境や人権に配慮する意向を示したのであろうが、特定技能1号で日本に来た外国人は相当の理由がなければ帰国させられないことを意味している。つまり「生身の人間」は帰せず、日本にいてもらうしかない。その後2号を取得し5年を経過すれば永住権を得る外国人も出てくる。

2017年10月時点で外国人労働者は120万人を超え、労働者の50人に1人は外国人である。入管法改正によりさらに増えれば、数十年後には「外国人参政権問題」が先鋭化してくる。国の形態を決定的に変え、後戻りができないこの法案の重要性は、あえて言うならば憲法改正にも勝る。

現在の自民党の憲法改正案は、9条2項をそのままにして自衛隊を認めるというものである。この憲法改正ができたとしても、法的には何も変わらない。あるとすれば自衛隊員の士気を高め、国民の防衛意思を示すという精神的なものであり国の根本形態は変わらない。安倍総理自身も「自衛隊の運用方法についてはこれまでとなにも変わらない」と述べている。

憲法改正法案が成立するには、衆院の審査会に提出され、本会議で趣旨説明・質疑を行った後、審査会で本格的な審議に入る必要がある。ここで過半数の賛成で可決し、さらに本会議で総議員の3分の2以上で可決、参院でも審査会の審議、採決、本会議採決と同じ手続きを踏んで改正案が成立。その後国民投票となり、成立には国民の過半数の賛成と険しいハードルが待っている。

そして、憲法改正よりも重い意味を持つと思える入管法の改正は衆参過半数で成立する。数勘定の上では、もはや成立しているこの法案が成立しないためには、部会で反対した多くの自民党議員が党議拘束に縛られず、自分の意思を国会決議で示すことが必要だが、その可能性はゼロに近い。

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