IWC脱退に考える日本の国益(アゴラ掲載記事)

メディア掲載

日本が国際捕鯨委員会(以下IWC)を脱退することについて、日本の大手各紙は反対の記事を社説に掲載している。そしてその理由のほとんどは国際協調を理由に挙げている。

West Australianより引用:編集部

読売新聞は、「日本は戦後、国際協調主義を掲げ、他国と主張が対立しても協議による合意を重んじてきた。その日本が、意見が通らないからと国際機関を脱退しては、日本外交全体にマイナスとなりかねない」、としている。また、そもそも鯨の消費は落ち続けており、ピーク時の1/20となっており、食べる人がいないではないかということらしい。

まず、国際協調主義についてだが、安全保障しかり、経済しかり、これまで日本は協調しすぎるほど協調をしてきた。その結果、他国から指摘されるとそれを慮(おもんぱか)り、自国の意見を主張することができない国になってしまっている。およそ外交は、自国の利益を相手国にいかにのんでもらうかにある。所属していた国際組織で自国の利益を主張し続けても意見が通らないのであれば、つまり自国の利益にならないのであれば、脱退することに何の問題があるのだろうか。例えば、地球温暖化対策の国際的枠組みであるパリ協定を離脱し、固まりつつあったTPPを離脱したトランプ大統領のアメリカは今も世界の盟主としての地位は不動である。

多くの日本人は、1933年3月に松岡洋右全権大使が国際連盟総会から退場して、連盟を脱退したことがトラウマとしてあるのではないか。それ以降、日本の外交は国際社会から孤立していったとされている事案である。今回も大手新聞を見ると日本が国際協調路線から外れ、日本が独自路線を歩み国際社会からはみ出していくことを懸念している。しかし、今回の件は安全保障に関してではなく、経済的な話しである。しかも捕鯨支持国41か国、反捕鯨国48か国と拮抗しており決して孤立しているわけではない。

また鯨の数は増え続け、エサになる魚を大量に捕食するため今や人間よりも魚を捕食しているとも言われておりこのままでは生態系的にも害である。反対している国の多くは動物愛護だそうだが、鯨はダメでなぜ豚や牛は食べて良いのか、これに答えられる人はまずいないだろう。反対の急先鋒であるオーストラリアは牛肉を大量に輸出している。世界が鯨を食べるようになれば困るからではないか、というのは下司の勘ぐりだろうか。

次に、鯨の消費が落ちているとの指摘だが、これこそ大きな勘違いだ。これまで鯨を取らずに消費を促進してきていないから落ちているのは当たり前で、多く取れるようになれば料理店が競って鯨の肉を出すようになり、美味い料理は次々と出てくる。もちろん値段にもよるが、牛より安くて美味いのならば消費は拡大する。

いずれにしても今回の事案は、これまで自己主張できなかった日本が自国の利益を優先し、国際社会にはっきりと主張できたことは最大の収穫であると思う。